2015年10月18日日曜日

モネ展に行ってきた

現在上野の東京美術館にて、1870年代に活躍したフランスの画家であるクロード・モネの、絵画や彼のコレクションの約90点を展示したモネ展が開催されています。
卒研やらなんやらで折れた心を癒すべく、前期展示の最終日である本日、突発的に行ってきました。私の感想を踏まえつつ、個人的に薦める鑑賞方法も紹介しながらまとめたいと思います。

モネとは

実は私もモネの作品は”睡蓮”,”日傘を差す女”ぐらいしかよく知りませんでした。通っていた中学の図書館にそのレプリカが飾られてあったこと、後者は美術の授業で模写したことがあり、そういったことで印象に残っていたこともあり、今回の展示で改めて興味を持ったわけです。

今回のモネ展前期(9/19~10/18)の目玉と言えば、美術史において「印象派」という新たなジャンルを確立した、間違いなくクロード・モネの代表作の一つといえる”印象・日の出”が展示されることでしょう。
そのことがモネ展に関する広告や特集でよく取り上げられていたので、それも一つ興味にありました。

チケット

私は美術展や原画展などに行くとき、だいたい前売り券を購入しておきます。
そして美術展における前売り券は美術館はもちろん、展示開催日前日23:59までローソンやファミリーマートといったコンビニで購入することも可能(※1)です。
前売り券で買っておくことのメリットとして、

・料金が当日券より若干安い
・会場にスムーズに入れる
・限定グッズ付きのチケットはだいたい前売りでしか扱っていない

が挙げられます。
前売り券でも学生やシルバーといった券種をちゃんと販売してくれているので、シネマチケットのように「前売り券より当日の学生券の方が安くない?」といったことはありません。

二つ目の『会場にスムーズに入れる』というのは人気の展示であるほど、当然当日券売り場は混雑します。
そして多くの美術館では券売り場と会場受付は離れているので、ここで時間的なロスも生まれること、さらに混雑する展示では会場受付の列で待たされることとなり、観る前から余分な苛立ちを感じてしまいかねません。(今回のモネ展においても、私が退場するときは入場待機に40分待ち、チケット購入に10分待ちでした。)
加えまして、開場前の朝から並んだのにも関わらず前売り券を購入していなかったため、券売り場に並び直すことになった人をモネ展や今年開催された『鳥獣戯画展』でも結構な人数を見かけました。私の体験から、美術館の列誘導スタッフはそのあたりをあまり考慮してくれないことが多いので、やはり事前購入をオススメします。

最後の限定グッズ付きチケットは多少お値段が張りますが、その展示限定のグッズをセットで売ってくれます。そういったグッズは会場の物販でも取り扱われないため、希少性が高くなるので、コレクターとしては見逃せないところです。
私は美術展においてはそういったチケットを購入したことはありませんが、以前開催された『カードキャプターさくら原画展』において、限定グッズ付きチケットを購入したことがあります。CCさくらのときもそうでしたが、画家(作家)人気はもちろんのことやはりグッズの希少性が高いため、限定チケットはすぐに売り切れてしまうことが多いです。もし目当ての画家や作家の展示が開かれるときは、しっかりと情報を収集して確実にご購入されることをオススメします。
グッズはだいたいにおいて会場受付か、物販コーナーにて受け渡しになりますので、しっかりとゲットしましょう。

あとグッズ付きチケットを購入することで個人的に副次的に得られる効果として、物販コーナーで『もう限定グッズは手に入ったし、そんなにグッズを買わなくていいかな』と出費に対する抑止力が働くことです。だいたい通常チケットが1,000円台のところ、限定グッズ付きチケットは3,000円台なので、「もうすでに2,000円はこの展示におけるグッズ費用を課金したんだよなあ」と思うわけです。ま、それでも買うときは買うだろうけど。
今回はもう開催しているので、前売り券はありません。混雑をどうしても避けたい人は先に東京美術館の券売り場で当日券を事前に購入するのがよいと思います。
美術展において当日券は買ったその日に入場しなくても、期間内でしたら有効です。他の用で上野に寄ったついでに購入できるとベストですね。

モネ展会場(会場入りまで)

今回はわりと突発的に行ってきたので、開場が9:30のところ9:10に着いてしまいました。おかげで300mほど並ぶことに。
休日に行く場合は、朝早くをオススメします。できれば到着10番以内になるように着くといいでしょう。
理由として、人気のある展示ですと入場待ちが多く発生します。お昼ぐらいにフラっと行っても先述にもある通り、チケット売り場と会場受付でだいぶ時間を食われます。また、メイン展示においても必ず待機列が発生しています。
加えて、多くの美術館においては客員入れ替え制ではありません。その気になれば、気に入った作品の前で何時間いてもいいわけです。
そうなりますと入場前に長時間待機したのにも関わらず、中に入っても先に入っていた人たちの人ごみであまりよく鑑賞できずに、ただひたすら疲れを溜めてしまう事態になりかねません。

余談ですが、私は『鳥獣戯画展』で平日の水曜日午後2時に行ったとき、会場入場に120分・メインの甲巻展示を鑑賞するのに200分かかると言われ、諦めて帰った苦い経験があります。そこで係員の人に混雑しない時間を尋ね、ツイッターである程度情報を収集してから、別日に改めて開場9時にも関わらず朝7時に会場に到着したことがあります。それでも到着20番以内ではありましたが、非常に快適でメインの甲巻も2回鑑賞することができました。
最近は展示ごとに公式ツイッターアカウントや公式サイトで混雑状況を教えてくれることも多いので、それを目安にしておくといいでしょう。

あと人気展示において早朝に行くことをオススメする理由として、早朝に行って並ぶ人はだいたいその展示画家・作家に詳しいお年寄りが多いことが私の経験から挙げられます。
そしてうまいこと己のコミュ力で「あのー、皆さんは何時から並んだんですか?」などと話しかけると、詳しい情報を教えてもらえます。(※2) 早朝の美術館前の列に並ぶと、謎の連帯感が生まれるんだよね……(※3)
とにかく、私は事前に詳しい情報を調べないので、「今回の展示の見所はここ!」,「〜〜という作品には〜〜といった時代背景があってね、そこを抑えて鑑賞すると味わいがある」といった生の情報を聞けるのは大変ありがたいことです。同好の士が増えるのは嬉しいですね。

またこれらの総括として、午前中に入ることによっておおよそ会場退出の時間をコントロールできます。美術展あとにゆっくりと近辺を歩くのも一興でしょう。特に上野は美術館以外にも見所がたくさんありますし。

モネ展に戻ります。一応20分前に並べたので、会場入りはそこそこスムーズでした。
待機列途中に、モネの”印象・日の出”が描かれた場所を訪れるという6分ドキュメンタリーを流しているディスプレイが一台置いてありました。待機列がいいところで止まったので、それを眺めて時間を潰すことができました。

あと会場内は絵画保護のため、だいたい空調が低めに設定していることと、乾燥していることが多いので、心配な人は防寒対策やマスクなどしておくことをオススメします。
夏に行った『マグリット展』において、私はあまりの寒さに会場内で毛布を借りました。混雑している会場ではそういった配慮がないことも多いので、気をつけておくとよいでしょう。

モネ展

会場受付を済ませると、最近の美術展では有名な人による音声ガイド貸し出し受付があります。だいたい500円程度で専用のヘッドホンを借り、特定の絵の前で操作するとその絵に関する解説をしてくれるものです。私は借りたことがないのでここでは言及しませんが、興味があれば借りるのもよいのではないでしょうか?モネ展では田辺誠一さんが担当されました。

そして会場前には必ず”出品作品リスト”を置いています。私はこれを必ず入手し、ペンを片手にこれを持ちながら会場内を進みます。”出品作品リスト”には作品名,制作年,技法・材質などが書いてあります。
展示会場ではこのリスト順に必ずしも展示されているわけではありませんが、作品名で気になるものを見つけたり、または気に入った作品名をチェックしてあとで調べるときに役立ちます。

だいたいの展示では初期作品→売れてきた/画家の個性が固まった頃→メイン→晩年期の順で展示されています。
モネ展では会場が上下階に跨がっての展示であったため、ワンフロアごとの順路は特にありませんが、一度階を変えると戻れません。(ちなみに『鳥獣戯画展』のように行ったり来たりできる会場では入場するやいなや、皆我先に甲展展示場所までほぼ競歩状態で向かったものです。)
そういった場合、一つ一つの作品をじっくりと眺めるのがよいでしょう。会場では作品時代別に画家の境遇や作品に関する全体的な解説パネルも飾られているので、それをしっかり読み込んでから時代ごとに画家の作品を鑑賞するのもおもしろいものです。

私は今回うっかりして朝食を取り損ねて空腹状態だったことと、やはりそこそこに混雑していたため、そういったパネルを読まずに進みました。

絵画に関しては特に”印象・日の出”と”睡蓮”,そして晩年期作品にシンパシーを受けたので感想をつらつらと述べます。


”印象・日の出”

5分ほど並びました。目玉展示であるため、間近で観られたのは体感で3〜5秒ほどでしたが、とにかく美しい!!!!
正直、各種ポスターやチラシで観たときはなんとも思いませんでしたが、実際は絵画自体が光っているように観えました。なるほどこの作品で”印象派”というジャンルが確立されたことと、モネが”光の画家”と呼ばれるのも納得です。
同じく展示されていた”霧のヴェトゥイユ”という作品では、街とそれを映す水面の風景の輪郭を曖昧にするかのごとく塗られた技法にとてつもない悲しみの印象を受けましたが、この作品は輪郭の曖昧さの中にあたたかさとやわらかさを感じました。
夕日を穏やかに映す水面のまた綺麗なこと。写真のような精確さをあえて再現せず、穏やかなタッチで描くところにモネの作風の個性が表れているように私は思います。


”睡蓮”

これもただひたすら綺麗の一言に尽きます。
地上の緑の木々を映す水面の青と、そしてその中に浮かぶ睡蓮の美しさは感動の一言です。


晩年期の作品

結構評価が分かれるところだと思います。
『晩年のモネは視力が落ちていたため、ああいうわけのわからない作品を描いたのだ。』という意見もちらほら聞きます。
しかしあえて私は書きましょう、「モネの晩年期の作品の良さをわからないのは、絵の鑑賞ポイントを一つ二つ見落としている」と。

確かに特設サイトにもある”バラの小道、ジヴェルニー”なんてディスプレイで観てもよくわからないでしょう。というか私もよくわかりません。

ちょっと話は逸れますが、私が美術館に足を運ぶ理由として、安らぎを求める以外に他の主な理由があります。それは”どうやって描いているかを知りたいから”です。
私も高2夏ぐらいまで”美大に入りたいな”と思っていたほどには美術制作に興味があった時代がありました。そのため、”この作品はいい。自分もこんな作品を描きたい。これはどうやって描いたのだろう”という目線が今でも残っています。
そして実際に実物を眺めると、印刷されたものではわからないことに気づけます。

まずは大きさでしょう。
教科書やポスターに掲載されているものは縮小され、一部カットされたものであることが多いです。
そして実際に額縁の前に立ってみて、横1m, 縦2mほどのキャンバスに描かれたものであることを確認するとき、”このキャンバスを塗りつぶすには相当な時間と絵の具が必要だろう”という予測がつくのです。そこで飽きっぽい私から観ると、一つの作品にかけた時間に対しての尊敬の念を抱きます。

次に塗り・筆圧です。
最近はデジタルが主体でピンと来ない人も多いかと思いますが、油絵にはキャンバスに塗られる絵の具の厚みが生じています。
その厚みによって印象が大きく変わるのが、油絵の一つの特徴とも言えるでしょう。
モネ展にもある鉛筆画(・ペン画)の場合は、独特の濃淡や筆圧から画家の微細な表現の特徴を抑えることができます。
『ドラゴンボール原画展』,『カードキャプターさくら原画展』で鑑賞した、ほとんど修正も下書きによる筆圧も見受けられない美しい原稿に、私は感動を覚えたものです。
他にも、水彩画は紙にみごと水を含ませて独特の淡みを出しているのを眺めることができるなど、実物でないとわからないことがあります。

そして最後はクロード・モネ晩年期作品を観るまで私もわからなかったのですが、絵画を眺める(適正)距離です。

モネの作品は、近くで観ると単なる線と点の構成に見えず、見方によっては稚拙と捉える人も多いでしょう。
しかし遠くから眺めると、不思議なことに美しいバラ園であったり、美しい日本の橋が確かに描かれているのです。

これは私の持論ですが、いくらいい絵でも毎日間近で眺めることは時間的・精神的・物理的に難しいでしょう。
その点モネの晩年期の風景画とは、例えば自宅でふとした瞬間に、壁に飾ってある絵画に目を留めたときに「ああ美しいな」と癒しを与えてくれるものではないでしょうか。
これは画集で眺めていても絶対にわかりません。美術展で、あるいは所蔵して家の壁に飾るのを日常のふとした瞬間に眺めることで、モネの作品の美しさを再認識できるのです。絵画は、本来そういうものでよいのかもしれません。ちなみにサイズが小さい絵画の方が高額であることが多いのは、「絵画は家で眺めるとき、大きすぎても邪魔になるから」という、案外日常に寄り添う理由だったりします。(※4)

そしてそういった”遠くから眺めたときに美しい絵”を描けたということは、モネ自身も大きなキャンバスを前にして,何度も何度も態勢や角度を変えた努力の可能性が伺えます。
普通絵画を描くときは、ずっと机にへばりつくものだと思いますが、モネの絵画における姿勢はそういった概念を崩して、何度も近づいては離れ、離れては近づいてはまた色を重ねるという試行錯誤を繰り返したのです。しかも目が見えていない晩年期に……、モネの凄まじい情熱を感じます。

絵画鑑賞時に、「これを実際描くために、どういったことが行われたのだろうか」という視点を加えると、晩年のモネ作品も違った評価になると思います。


おみやげ

私は美術展を観た感動を何かしら残しておきたい人なので、物販コーナーでは気に入った絵画のポストカードの一枚二枚をだいたいにおいて買っています。

今回は2016年のポストカードカレンダー(1,000円)を購入しました。
理由は、モネ展ではポストカード1枚150円、8枚セットのもの1,000円という価格設定だったのですが、先のポストカードカレンダー12枚セットには私の気に入った絵画が全て収録され、しかもカレンダーとしての機能を果たしたあとはポストカードとして使えることに気に入ったので、そちらを購入しました。予算オーバーでしたがよい買い物をしたと思います。
ちなみに会場は2,400円以上からのクレジットカードご利用を言われるので気をつけてください。(※5)

会場では代表作のポスターを買う人,”睡蓮”や”印象・日の出”を用いたクリアファイルを購入する人が多かったように思えます。
最近の美術展ではクリアファイルやペンといった、日常でも使える文房具を売るところが増えたのは大変嬉しいですね。


※1 展示によって取り扱いコンビニが違うので要確認してください。
※2 必ずしも詳しい情報を教えてもらえるとは限りません。不審者扱いされることも重々承知してください。
※3 これももちろん、列待機中に周りの人と話していたかどうかで変わります。
※4 私がとある画廊から聞いた話なので、諸説あるかもしれません。
※5 本当はクレジットカード利用額に最低額を決めてはいけないらし…あっ何をする、ということで長々お読みいただきましてありがとうございました。